「訪日外国人のお客様、どの決済に対応すればいいの?」
「AlipayとWeChat Payって、どっちが必要?どう違うの?」
「海外のクレジットカードって、今の端末で使えないの?」
インバウンド需要が回復するなか、観光地だけでなく都市部・住宅街の美容室にも訪日外国人の来店機会が増えています。しかし「どの決済手段を揃えればいいか分からない」「とりあえず何か対応したいが何から始めればいいか」という声は多く聞かれます。
この記事では、美容室に来店する訪日外国人客が実際にどんな決済手段を使うのか、客層・客単価・国籍ごとに整理したうえで、対応すべき優先順位と導入方法まで美容室オーナーの視点で解説します。集客方法・予約システム・多言語対応は取り上げません。「決済手段の選定と導入」だけに絞った内容です。
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美容室に来る訪日外国人客はどんな客層か
インバウンド対策を考えるとき、「訪日外国人」をひとまとめにしてしまうと、対応の優先順位を誤ります。まず美容室に来る訪日外国人の客層を理解することが出発点です。
多いのは東・東南アジア圏の観光客
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、訪日外客数のうち最も多いのは韓国・中国・台湾・香港・タイなど東・東南アジア圏です(2024年実績)。これらの国々の旅行者は、日本の美容サービスを「体験コンテンツ」として高く評価する傾向があり、観光中にヘアカット・カラー・縮毛矯正などを目的に美容室を訪れるケースが増えています。
欧米・中東系は高単価メニューを選ぶ傾向
一方、欧米や中東からの訪日客は人数こそ少ないものの、1回あたりの客単価が高い傾向があります。カット・カラー・トリートメントをセットで依頼するケースや、高額なヘアケア施術を利用するケースも珍しくありません。このような客層は、クレジットカード(特にVisaやMastercard)での決済を前提としています。
客単価ごとに「必要な決済手段」が変わる
美容室のインバウンド決済を考えるうえで最も重要なのは、「自店の客単価とターゲット国籍に合った決済手段を選ぶ」という視点です。すべての決済に対応しようとすると管理コストが膨らみます。まず自店の客単価帯と来店が想定される国籍から優先順位をつけることが実践的なアプローチです。
訪日外国人客が使う決済手段の種類と特徴
訪日外国人が使う決済手段は、大きく「中国系QRコード決済」「海外発行クレジットカード」「銀聯カード」の3カテゴリに分かれます。それぞれの特徴を整理します。
Alipay+(アリペイプラス)とは
Alipay+は、中国最大の電子決済サービス「Alipay(支付宝)」を運営するアント・グループが提供するグローバル向け決済プラットフォームです。Alipay本体だけでなく、韓国のKakaoPay、フィリピンのGCash、マレーシアのTouch 'n Goなど、アジア各国の主要なモバイル決済アプリをAlipay+の加盟店でまとめて利用できる仕組みになっています。
一度Alipay+に対応すると、これらのアプリユーザー全員に対応できる点が大きなメリットです。東・東南アジア圏の訪日客を取り込みたい美容室には、優先度が高い決済手段といえます。
WeChat Pay(ウィーチャットペイ)とは
WeChat Payは、中国のテンセントが運営するWeChat(微信)アプリに組み込まれた決済機能です。中国本土の旅行者の多くが日常的に使っており、特に「WeChat Payしか使えない」というユーザーも一定数存在します。Alipay+に対応しても、WeChat Payをカバーできるわけではないため、中国本土からの客が多い立地の美容室は両方の対応が望ましいです。
銀聯カード(UnionPay)とは
銀聯カード(UnionPay)は、中国の国家規格に基づくカードブランドで、世界発行枚数が多いカード規格のひとつです。中国本土・香港・マカオの旅行者の多くが保有しており、クレジットカードタイプとデビットカードタイプがあります。見た目は通常のクレジットカードと同じですが、通常のVisa/Mastercardの端末では読み取れないため、対応端末またはサービスが別途必要になります。
海外発行クレジットカード(Visa・Mastercard・AMEX)
欧米・オセアニア・中東の旅行者は、自国発行のVisaやMastercardを使って決済することが一般的です。日本国内でもVisaやMastercardのカードは広く使えますが、重要なのは「タッチ決済(コンタクトレス)」への対応です。海外ではカードをかざして支払うタッチ決済が主流になっており、「差し込んでPINを入力する」という日本の習慣に戸惑う外国人客も少なくありません。タッチ決済対応の端末があると、スムーズに会計できます。
インバウンド決済の仕組み全般については、インバウンド決済とは?訪日外国人向けキャッシュレス導入の選び方でも詳しく解説しています。
美容室が対応すべき決済手段の優先順位
すべての決済手段に一度に対応しようとする必要はありません。自店の客単価と立地・ターゲット国籍に合わせて、段階的に対応を広げるのが現実的です。
客単価〜5,000円のサロン(カット専門・ショートメニュー中心)
カット・シャンプーなどを中心に客単価が5,000円以下のサロンでは、東・東南アジア系の観光客がメインの訪日客層になりやすいです。このゾーンでは、まずAlipay+への対応が優先度1位です。一度の契約で韓国・東南アジア各国のモバイル決済ユーザーをカバーできるため、費用対効果が高い選択です。
客単価5,000〜15,000円のサロン(カラー・トリートメント・縮毛矯正中心)
中価格帯のサロンでは、中国本土からの訪日客も来店が見込まれます。Alipay+に加えてWeChat Payと銀聯カードへの対応を加えることで、中国本土客をほぼカバーできます。また、このゾーンから欧米系・韓国系のリピート客が増えるため、海外発行クレジットカードのタッチ決済対応も視野に入れたいところです。
客単価15,000円超のサロン(フルメニュー・高単価施術中心)
高単価サロンでは、欧米・中東・オセアニアからの訪日客の割合が高まります。このゾーンではクレジットカード(Visa・Mastercard・AMEX)への対応は必須です。高額施術をスマホQRで払うことを好まない客層も多いため、カードによる安定した決済体験が重要になります。多通貨の決済設計については、多通貨決済の導入ガイドも参考にしてください。
観光地・繁華街立地はフルセットが有利
浅草・新宿・渋谷・原宿など訪日客が多い立地のサロンは、国籍のばらつきが大きいため、Alipay+・WeChat Pay・銀聯・海外クレカの4点セットに対応しておくと来店機会の取りこぼしを最小化できます。見た目にも「キャッシュレス完全対応」のPOPやステッカーを設置することで、入店前に安心感を伝えられます。
美容室のインバウンド決済導入で注意すべき3つのポイント
インバウンド向けの決済を導入する際、美容室特有の注意点があります。端末を増やせば済む話ではなく、運用面の設計が重要です。
「端末の増加」は現場の混乱につながる
クレジットカード用・Alipay用・WeChat Pay用と端末を別々に契約すると、会計カウンターに複数の端末が並び、スタッフがどれを操作すべきか戸惑う場面が生じます。特に予約が重なる時間帯では、会計のもたつきがそのまま顧客体験の低下につながります。複数の決済手段を1台の端末またはひとつの契約にまとめることで、オペレーションを整理できます。
決済手数料と入金サイクルを事前に把握する
インバウンド向け決済は、一般的な国内クレカ決済と手数料・入金サイクルが異なるケースがあります。Alipay+やWeChat Payの手数料はサービスによって異なりますが、目安として国内QR決済(1.5〜2.0%前後)と近い水準のサービスが多いです。ただし、海外発行カードの国際ブランド手数料や銀聯の手数料は若干高めになる場合があります。事前に各手段の手数料率と入金タイミングを確認しておきましょう。手数料の相場については決済代行サービスの手数料相場と内訳もご参考ください。
言語対応はQRコードと金額表示だけでも十分
決済面での言語対応として最低限必要なのは、「金額をはっきり表示すること」と「QRコードを提示してスキャンを促す流れを作ること」です。全文英語対応のメニュー表や多言語スタッフを用意しなくても、決済の場面だけは「金額→QR or カード」の動作フローを可視化するだけで、大半の外国人客はスムーズに決済できます。
美容室がインバウンド決済を一括導入する方法
インバウンド向けの複数の決済手段を、できるだけ手間なく導入するには「決済代行サービス(PSP)」の活用が最も効率的です。
決済代行サービス(PSP)を使うメリット
決済代行サービスとは、クレジットカード・QRコード決済・電子マネーなど複数の決済手段を1つの契約でまとめて導入・管理できる仕組みです。Alipay+・WeChat Pay・銀聯・海外クレカへの対応を個別に申し込む必要がなく、1回の審査・1台の端末・1つの入金窓口に集約できます。
美容室の場合、1台の端末でインバウンド向け決済とふだんのキャッシュレス決済を兼用できる点が特に実用的です。「国内のPayPayやSuicaも使えて、訪日客のAlipayも同じ端末で対応できる」という環境を一度に整えられます。
個別契約vs決済代行の比較
| 項目 | 個別契約(直接申し込み) | 決済代行経由 |
|---|---|---|
| 申し込み手続き | 決済手段ごとに審査・契約 | 1回の契約でまとめて対応 |
| 端末数 | 手段ごとに端末が必要なケースあり | 1台で複数手段に対応 |
| 入金管理 | 手段ごとに入金先・タイミングが異なる | 入金先を1本化できる |
| 対応範囲の拡張 | 追加ごとに再申し込みが必要 | 一括追加が容易 |
QRコード決済の仕組みを理解しておく
Alipay+やWeChat Payは、店舗が提示するQRコードを客がスキャンする方式(MPM方式)と、客のスマートフォン画面のQRコードを店舗がスキャンする方式(CPM方式)があります。美容室では、会計カウンターにQRコードを置いておき、客が自分のアプリでスキャンするMPM方式が設備投資が少なく導入しやすいです。QRコード決済の仕組み全般についてはQRコード決済を店舗に導入する方法もご参照ください。





