「KYC(本人確認)って、何のためにやるの?」
「最近よく聞く『eKYC』は、従来の本人確認と何が違う?」
「決済サービスを提供する事業者にも義務があるの?」
金融機関や決済サービスの申し込みで必ず求められる「本人確認(KYC)」。面倒に感じることもありますが、不正やマネーロンダリングを防ぎ、利用者を守るための重要な仕組みです。
この記事では、KYCとは何かという基本から、なぜ必要なのか、オンラインで完結するeKYC、そして決済・金融サービスにおける事業者の義務までを、わかりやすく解説します。
KYC(本人確認)とは?
KYCとは「Know Your Customer(顧客を知る)」の略で、サービスを提供する事業者が、利用者が本当にその本人であるかを確認する手続きのことです。日本語では「本人確認」と訳されます。
金融やお金に関わるサービスでは、「相手が本当に本人か」が分からないまま取引すると、なりすましや犯罪に悪用される恐れがあります。KYCは、その入口でリスクを防ぐための仕組みです。
銀行口座の開設、クレジットカードの申し込み、送金サービスの利用など、お金を扱うサービスでは、なりすましや不正利用を防ぐためにKYCが行われます。
「Know Your Customer」という言葉のとおり、事業者が「自社の顧客がどんな人物か」をきちんと把握することが、安全なサービス提供の前提になっています。
KYCで確認すること
一般的なKYCでは、氏名・住所・生年月日といった情報を、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)と照らし合わせて確認します。場合によっては、書類と本人の顔を照合することもあります。
近年は、本人確認書類の偽造や他人になりすます手口も巧妙化しているため、書類の真正性や、書類の持ち主が申込者本人であるかを、より厳密に確認する流れになっています。
これは、KYCの目的が「書類さえ揃っていればよい」のではなく、「実在する本人が申し込んでいるか」を確かめることにあるためです。
なぜ本人確認が必要なのか

犯罪収益移転防止法(犯収法)
金融機関などが本人確認を行う根拠となっているのが、「犯罪収益移転防止法(犯収法)」です。この法律は、犯罪で得たお金の洗浄(マネーロンダリング)やテロ資金への流用を防ぐことを目的としています。対象となる事業者には、取引時の本人確認や記録の保存などが義務づけられています。
対象となるのは、銀行などの金融機関のほか、資金移動業者、クレジットカード会社、一定の要件に当てはまる事業者などです。自社が対象になるかは、提供するサービスの内容によって変わります。
マネロン・不正利用の防止
本人確認を徹底することで、他人になりすました不正な口座開設やサービス利用を防げます。フィッシングなどで盗まれた情報の悪用を防ぐ意味でも重要です。フィッシングの手口はフィッシング詐欺とはで解説しています。
また、決済の場面では、本人認証サービス(3Dセキュア)のように「決済のたびに本人を確かめる」仕組みも、広い意味での本人確認といえます。3Dセキュアについては3Dセキュア義務化とはをご覧ください。
eKYC(オンライン本人確認)とは

eKYCとは「electronic Know Your Customer」の略で、スマートフォンなどを使ってオンラインで完結する本人確認です。従来は書類を郵送したり店頭に出向いたりする必要がありましたが、eKYCなら、スマホで本人確認書類と自分の顔を撮影して送るだけで手続きが完了します。
撮影した顔写真と書類の顔写真を照合したり、その場で指定された動作をしてもらったりすることで、なりすましを防ぎます。
eKYCのメリット
eKYCの普及により、利用者は自宅にいながら数分で本人確認を終えられるようになりました。事業者にとっても、郵送コストや手続きの手間を減らし、申し込みから利用開始までの時間を短縮できるメリットがあります。
スマホのカメラで書類と顔を撮影する方式のほか、ICチップ付きの本人確認書類を読み取る方式などがあります。オンラインで完結するため、店頭に行く手間や郵送の待ち時間がなくなります。
本人確認のスピードは、そのまま「申し込んでからサービスを使えるまでの速さ」に直結します。eKYCは、利用者の利便性を大きく高めています。
決済・金融サービスでのKYC

どんな場面で行われる
KYCは、次のような場面で行われます。
- 銀行口座やクレジットカードの申し込み。
- コード決済アプリの送金・出金機能の利用開始。
- 資金移動業などのサービス登録。
とくに、お金を送ったり引き出したりできるサービスでは、本人確認が欠かせません。こうしたサービスの土台となる法律は資金決済法とはで解説しています。
逆に、実店舗やECサイトでの通常の買い物では、お客様が個別に本人確認を求められることはほとんどありません。カード会社側で本人確認が済んでいるためです。
そのため、店舗としては「本人確認は決済サービス側の役割」と理解しておけば十分なことが多いです。
事業者にとってのKYC

決済サービス提供時の義務
自社で送金や前払い、独自の決済サービスなどを提供する事業者は、犯収法などにもとづき本人確認が求められる場合があります。一方、多くの店舗・EC事業者のように、決済代行を通じてカード決済などを受け付けるだけであれば、利用者のKYCは決済サービス側が担うのが一般的です。
つまり、店舗はお客様一人ひとりの本人確認を自前で行う必要はなく、決済代行やカード会社の仕組みに任せられます。自社でどこまで対応すべきか迷う場合は、利用する決済サービスに確認するのが確実です。
本人確認の負担を自社で抱え込まずに済むのは、決済代行を利用する大きなメリットの一つでもあります。
自社がどこまで対応する必要があるかは、提供するサービスの内容によります。決済まわりの仕組みは決済代行とはもご覧ください。
KYC・本人確認に関するよくある疑問
本人確認書類には何が使える?
運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどが一般的です。サービスによって使える書類が異なるため、事前に確認しましょう。
本人確認は毎回必要?
通常は、サービスの利用開始時など、必要なタイミングで行われます。ただし、高額な取引や不審な取引の際に、あらためて確認が求められることもあります。
本人確認をしないとどうなる?
本人確認が義務づけられたサービスでは、確認が済むまで利用を開始できません。事業者側が確認を怠ると、法令違反として処分の対象になることもあります。

