「決済手段は多いほうがいい?それともシンプルにすべき?」
「自社 EC に最適な 3〜5 つの組み合わせを知りたい」
「導入コストと売上効果のバランスをどう取れば良いか分からない」
EC サイトでの決済手段の選定は、売上を 10〜30% 左右する重要な戦略テーマです。総務省・経済産業省・各種民間調査の 2025〜2026 年データによれば、消費者の決済手段は年々多様化し、「自分の好きな決済手段がないと購入をやめる」割合は約 4 割に達します。本記事では、EC で導入できる主要決済手段を最新利用率データとともに整理し、商材・顧客属性・単価別に最適な「3〜5 つの組み合わせ」を 2026 年版で提案します。
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EC 決済の導入方法は 3 つ|まずどれを選ぶかを決める
決済手段を選ぶ前に決めておきたいのが「どうやって導入するか」です。EC 決済の導入方法は大きく 3 つに分かれ、どれを選ぶかによって使える決済手段の幅も、かかる手間も変わります。
3 つの導入方法と向いているケース
| 導入方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| カート標準の決済を使う | ASP 型カートに最初から組み込まれている決済をそのまま使う | とにかく早く始めたい。決済手段の選択にこだわりがない |
| 決済代行会社と契約する | 1 社と契約し、複数の決済手段をまとめて導入する | 決済手段を自分で選びたい。多くの EC 事業者はここ |
| カード会社と個別に契約する | カードブランドごとに契約・審査・接続を行う | 取扱高が大きく、条件交渉と運用を自社で担える |
多くの EC 事業者が決済代行会社を選ぶ理由
契約・審査・システム接続・入金管理が 1 か所にまとまるためです。あとから決済手段を追加したくなったときも、同じ窓口で相談できます。
個別契約は条件を交渉できる余地がある一方、カードブランドの数だけ審査と接続作業が発生します。取扱高が十分に大きくなってから検討する選択肢と考えるのが現実的です。
使っているカートによって選べる方法が決まることもある
ASP 型のカートでは、利用できる決済代行があらかじめ限定されている場合があります。先にカートのタイプを確認しておくと、後戻りを防げます。
カート別の進め方はEC カート・ASP 別の決済導入方法で整理しています。
クレジットカード決済だけ先に入れたい場合
まずカード決済から始めるのが一般的です。申込から稼働までの流れ・期間・費用はEC サイトにクレジットカード決済を導入する方法で詳しく解説しています。
EC 決済手段の全体像 (2026 年最新利用率)
2025〜2026 年の主要調査をもとに、EC で利用される決済手段のシェアを整理します。クレジットカードが依然首位ですが、QR コード決済の伸びが顕著です。
EC 決済手段の利用率 (2025 年複合データ)
- クレジットカード決済: 約 70%
- QR コード決済 (PayPay 等): 約 27%
- コンビニ決済: 約 20%
- 後払い (NP 後払い・atone 等): 約 15%
- キャリア決済 (d 払い・au かんたん等): 約 13%
- ID 決済 (Amazon Pay・楽天ペイ等): 約 12%
- 銀行振込・ペイジー: 約 10%
- 代金引換: 約 6%
- BNPL (Paidy 等): 約 5%
- 電子マネー (Suica/楽天 Edy 等): 約 4%
- デビットカード: 約 3%
- 暗号資産・その他: 1% 未満
クレジットカードは 2018 年の 80% 超から徐々に下落し、QR コード決済とほぼ拮抗するシーンも増えています。日本のキャッシュレス化 の流れを反映した変化です。
主要決済手段 12 種類の特徴
1. クレジットカード決済
全 EC サイトで導入必須。客単価が高く、リピート購入率も最高。手数料 2.5〜3.6%。EMV 3-D セキュア 対応が 2025 年 3 月末に義務化されています。
2. QR コード決済 (PayPay・楽天ペイ・d 払い・au PAY)
20〜40 代の利用率が高く、特に若年層獲得に効果大。手数料 2.5〜3.25%。スマホ完結の UX が魅力。QR コード決済のビジネス活用 も参照。
3. コンビニ決済
カード非保有者・若年層・高齢層に必須。手数料 100〜200 円+1〜2%。決済から入金まで時間差があり、注文後の入金確認運用が必要です。
4. 後払い (NP 後払い・atone)
「商品を見てから払いたい」層のカゴ落ち防止に効果絶大。手数料 3〜4%。与信は決済代行会社が引き受け、未払いリスクをゼロにできます。
5. キャリア決済 (d 払い・au かんたん決済・ソフトバンクまとめて支払い)
携帯電話料金と合算請求。学生・若年層、デジタルコンテンツに強い。手数料 4〜10% とやや高め。
6. ID 決済 (Amazon Pay・楽天ペイ・PayPal)
会員登録不要で住所・カード情報を自動入力。初回購入時のカゴ落ち防止に強力。手数料 3.5〜4%。
7. 銀行振込・ペイジー
BtoB EC や高額商品に必須。振込手数料は顧客負担が一般的。入金確認の運用負荷あり。
8. 代金引換
カード非保有者と「現物を見るまで信頼できない」層に有効。手数料 300〜600 円。受取拒否リスクと配送会社契約が課題。
9. BNPL (Paidy・Klarna)
3 回分割・後払い特化。20〜30 代の高額商品購入時に客単価押し上げ効果。Amazon・Apple 等で利用が広がっています。
10. 電子マネー (Suica・楽天 Edy・WAON・nanaco)
少額決済中心。EC では利用率低めだが、店頭受取の OMO 連携時に有効。
11. デビットカード
クレジットカード非保有層の代替手段。即時引落のため未払いリスクなし。手数料はクレジットと同等。
12. 法人向け請求書払い・後払い
BtoB EC では月末締め翌月払いの請求書払いが標準。請求書カード払い サービスと組み合わせると与信管理を一元化できます。
商材×顧客属性×単価別の推奨組み合わせ
「全部入り」を目指すと手数料・運用負荷が肥大化します。商材・顧客属性・客単価で 3〜5 つに絞るのが定石です。
パターン A: ファッション・コスメ EC (BtoC・客単価 5,000〜2 万円・女性 20〜40 代)
- クレジットカード (必須)
- 後払い (NP 後払い): 「届いてから払いたい」層を獲得
- Amazon Pay: 初回購入のカゴ落ち防止
- PayPay: 若年層獲得
4 種類で大半の顧客をカバー。後払いの追加で売上 10〜15% 増の事例が多数あります。
パターン B: 高単価家電・家具 EC (BtoC・客単価 5 万〜30 万円)
- クレジットカード (必須)
- BNPL (Paidy・Klarna): 分割払いで購買ハードル低減
- 銀行振込: 法人購入対応
- 代金引換: 高額品の安心感
客単価が高いため、分割払いと安心感の両立が鍵です。
パターン C: デジタルコンテンツ・SaaS (定額課金・客単価 1,000〜1 万円/月)
- クレジットカード (必須・トークン化 必須)
- キャリア決済: 学生・若年層
- PayPay (リカーリング対応): カード非保有者
3 種類でシンプルに。SaaS 向け決済 の専用機能も評価ポイント。
パターン D: BtoB EC・卸売 (法人取引・客単価 5 万〜500 万円)
- 請求書払い (掛売): 必須
- クレジットカード (法人カード): 即時決済希望の中小企業向け
- 銀行振込: 大口取引
- 請求書カード払い (BPSP): キャッシュフロー改善需要
BtoB は与信枠管理と請求書発行業務が中心。BtoC とは設計思想が大きく異なります。
パターン E: 食品・サプリ定期通販 (BtoC・客単価 3,000〜1 万円/回)
- クレジットカード (リカーリング・必須)
- 後払い: 初回購入のハードル下げ
- コンビニ決済: シニア層対応
- キャリア決済: 若年層
初回ハードル下げと継続課金の安定運用がカギ。
決済手段の追加とカゴ落ち防止
カゴ落ち の主要要因の 1 つが「自分の使いたい決済手段がない」です。経済産業省の調査でも、約 4 割の消費者が「希望する決済手段がなければ購入をやめる」と回答しています。
決済手段追加でのカゴ落ち改善効果 (典型例)
- クレジットカードのみ → +後払い: カゴ落ち率 -5〜10%
- +QR コード決済 (PayPay): 若年層購入率 +10〜15%
- +Amazon Pay: 初回購入完了率 +15〜20%
- +BNPL (高単価商材): 客単価 +20〜30%
「多すぎる」リスクもある
一方、決済選択肢が 7 種類以上になると「選択疲れ」で逆にカゴ落ち率が上昇する研究もあります。3〜5 種類が経験則的な最適解です。
導入方法と決済代行 (PSP) の活用
複数の決済手段を個別に契約・実装すると、契約数・API 数・運用工数が肥大化します。1 社の PSP (決済サービスプロバイダ) と契約することで、複数決済手段をワンストップで導入できます。
PSP 経由のメリット
- 契約・審査・運用が 1 本化
- API 連携が 1 本で複数決済をカバー
- カスタマーサポートも 1 窓口
- 売上データの一元管理が可能
PSP 選定の主要軸
- 対応決済手段の網羅性
- 決済手数料の体系 (手段別・月額)
- EMV 3-D セキュア 2.x の標準対応
- API ドキュメントと SDK の整備
- 入金サイクル (月 2 回 / 週次 / 翌日)
詳細は 決済代行サービス比較 をご参照ください。
導入にかかる期間と費用の目安
申込から稼働までは、審査を含めて数週間〜1 か月半程度をみておくと余裕が持てます。最も時間がかかるのは加盟店審査で、サイトの表示や商材の確認が必要になると延びていきます。
費用は「初期費用」「月額固定費」「決済ごとにかかる手数料」「振込手数料などの実費」の 4 つに分けて比較します。手数料率だけで判断せず、入金までの期間まで含めて見比べてください。
審査の準備は加盟店審査の通過率を上げるポイント、費用の内訳は決済代行の手数料相場と内訳にまとめています。
すでに他社を使っている場合の切り替え
稼働中の EC サイトでも決済代行は変更できます。決済が止まらないよう、新旧を重ねて動かす期間を設けるのが基本です。手順はEC 決済代行の乗り換えガイドで解説しています。
越境 EC・インバウンドへの対応
海外展開や訪日外国人 EC を視野に入れるなら、追加で以下の決済手段が必要です。地域・客層別に優先度が大きく異なるため、ターゲット市場を明確にしてから導入を検討します。
- Alipay / WeChat Pay: 中国本土・訪日中国人観光客向け。中国系顧客の決済の 90% 以上をカバー
- UnionPay (銀聯): 中国系カードブランド。発行枚数は世界最大規模
- PayPal: 北米・欧州での標準。越境 EC で最低限導入したい決済手段
- Klarna / Afterpay: 欧米の若年層向け BNPL
- マルチ通貨決済: USD・EUR・CNY などでの請求。為替リスクを顧客負担にできる
マルチカレンシー決済 と インバウンド向け決済 の解説もあわせてご参照ください。
導入時のコスト試算
決済手段を増やすほど運用コストも増えるため、追加導入の意思決定には ROI 試算が欠かせません。月商 1,000 万円の EC で「クレジットカードのみ」から「+QR コード+後払い」を追加した場合の試算例を示します。
試算条件と効果
- 追加手数料コスト: QR コード+後払いの取扱比率 30%、平均手数料 3.2% で月 9.6 万円
- カゴ落ち改善効果: 売上換算で月 +100〜200 万円 (改善率 10〜20%)
- 差し引き: 月 90〜190 万円のプラス効果
- 投資回収: 初期実装費 30〜50 万円なら 1 か月以内に回収
低単価・若年層中心の商材ほど効果が大きく、高単価・法人向け商材ほど小さい傾向があります。自社の業種と顧客層に合わせた試算を実施しましょう。
よくある質問
Q1. 決済手段は何種類あれば十分ですか?
BtoC EC では 3〜5 種類が最適。クレジットカード+QR コード決済+後払いまたは ID 決済の組み合わせが、コストとカバー率のバランスで優秀です。
Q2. 後払いの未払いリスクは誰が負いますか?
NP 後払い・atone などの後払い決済代行サービスを利用すれば、与信審査と未払い時の保証は決済会社が引き受けます。事業者側は手数料を払うことで、未払いリスクをゼロにできます。
Q3. PayPay などの QR コード決済は EC でも使えますか?
はい。PayPay 残高決済はオンラインでも利用可能で、リカーリング (定期課金) 対応も進んでいます。20〜40 代の獲得には特に効果的です。
Q4. クレジットカード手数料を顧客に転嫁できますか?
日本では「クレジットカード手数料の顧客転嫁」は加盟店規約で原則禁止されています。コンビニ決済・代引きの手数料は転嫁可能ですが、カード手数料は事業者負担が必須です。
Q5. 越境 EC を始めるなら何から導入すべきですか?
まずは Visa/Master のマルチ通貨対応で 80% の市場をカバーし、ターゲット国に応じて Alipay (中国)・PayPal (米欧) を追加するのが定石です。









